素麺製法技術が半田に伝わったのは天保時代の初期と言われております。当時小野浜港より撫養方面へ運航していた平田船の船頭が自給用・副業用として行ったのが始まりで、その後、天保四年正月(一八三三)に現赤川治家が元祖半田そうめんとして製麺をはじめたと考えられております。四国三郎吉野川の豊富な地下水と霊峰剣山から吹き降ろす寒風に鍛えられた腰の強い麺は、まさに芸術品と呼ぶにふさわしい逸品です。
半田素麺は手間暇かけて、じっくりと麺と語らいながらつくるものです。暑い日も、寒い日も、季節ごとに、一日ごとに、晴れの日も雨の日も麺と正面から向き合っています。麺は人間のように生きています。機嫌が悪いときはあやすように、良いときは誉めるように「おいしくなれ」と子どもを大切に育てる親の気持ちと同じです。天保四年から、約180年ずっと同じ作り方。時代が変わってもこれだけは変えられない。だからおいしいとお客さまから言っていただけると思っています。